萬 葉

島田文武 著作集

 日本が敗戦した翌年に、かつては武蔵野と称した東京で生を受け、以後、貧しいながらも昭和、平成と云ふ、慌しくも物資豊かな社会に生きて、その生の喜びと楽しみ、苦しみと悲しみを、いささか感受し今日に至りしを、有難く思はねばなりませぬ。

 しかしながら、「生あるものは、やがて死する」が必定ならば、それは「常あるものにして常なし」のこと故、今は今に生きながらふを尊しとし、折々、暇を見付けては老愚の戯言なる文箋を折り重ね、天命の尽きるを待つのみ。